難治性の「トリプルネガティブ乳がん」と診断された女性=西岡臣撮影

 また、薬が効かなくなった――。

 2022年、東京都の会社員ナオコさん(51)は落胆していた。乳がんの中でも難治性の「トリプルネガティブ乳がん」と診断されてから2年。高齢の母と2人暮らしをしながら、がん治療に向き合ってきた。

 左胸の全摘手術後、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤など、あらゆる標準治療を試したが、わきの下のリンパ節に転移した腫瘍(しゅよう)が再発を繰り返した。肺にも影があると言われた。

 わきの腫瘍は7センチほどになり、その一部は皮膚から露出してしまっていた。見るのもつらくて涙が出た。

 「もうダメなのかもしれないな」

 いよいよ、治療の選択肢が本当にない。そんなときに舞い込んだのが、新薬の効果や安全性を確かめる治験の誘いだった。海外ではすでに使われていて、治療の選択肢が少ないトリプルネガティブ乳がんに対する新たな治療薬の候補だという。

治療法がとぼしかった、ステージ4や完治が難しい難治がん。近年は医療の進化によって回復したり長期間生存ができるようになったりしています。患者自身や医師らが驚くほどの変化や、限界もある現在地を伝えます。

 「やります!」…

共有
Exit mobile version