
カリフォルニアの強い日差しが照りつける中、スタンフォード大の佐々木麟太郎は言った。
「Yeah.I just did my job.(やるべきことをしただけです)」
2月中旬。米大学野球のリーグ開幕戦で勝利した後、米メディアの取材に通訳なしで受け答えした。試合中は一塁から投手と頻繁にベースカバーの確認をしていた。デービッド・エスカー監督は「野球におけるコミュニケーション能力が優れている」と評価した。
岩手・花巻東高で歴代最多とされる通算140本塁打を放った左のスラッガー。ルーキーながら「3番・一塁」で中軸を担う。3月3日時点で全12試合に出場し、打率3割6分、14打点。米メディア「ベースボール・アメリカ」が選ぶ2025年の新人選手ランキングで1位に選ばれたほどの注目度だ。
「勉強も野球も100%を尽くし、人生の可能性を広げたい」。将来の大リーグ入り、そして野球引退後のキャリアも考えての決断だった。海を渡ってから、約1年。英語での日常会話すらままならなかった19歳は、すっかり異国に溶け込んだ。
同大の野球部には、スカウトされた選手だけが入部できる。佐々木は高校での実績などで、学費と寮費が免除される「フルスカラシップ」での合格を勝ち取った。「言語の習得が最優先」。英語のスポーツニュースを読む練習から始まった米国生活だった。
世界トップの文武両道をめざす大学は、スケールが違った。
- 「夢を殺す人」は身近にいる 菊池雄星が明かす「殻を破る思考法」
シリコンバレーの中心部にあ…