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競技中の音を可視化するシステム「ミルオト」

 聴覚障害のあるアスリートの国際大会「デフリンピック」が11月、日本で初めて開かれる。世界各国・地域から約3千人の選手の参加が見込まれるスポーツの祭典でも、聴覚障害者の観戦をサポートするためにAI(人工知能)技術の活用が期待される。

迫力、臨場感を「見える化」

 まるで漫画を見ているかのような観戦体験だ。

 卓球選手が球を打つと、「カッ」という効果音が瞬時に画面に映し出される。対戦する2選手が発する音は黄色と赤色の文字に分けられ、どちらが打ったのか一目瞭然。力強いスマッシュが決まると「コォーン」という文字が画面に現れた。拍手や歓声、試合進行に関する情報も文字で表示される。拍手は音量に応じて、文字の大きさが変わるという。

 競技中に生じる音の迫力や臨場感を、試合映像上に擬音で可視化するシステム「ミルオト」は、デザイン会社「方角」(東京都渋谷区)や早稲田大学岩田研究室が協力して開発した。今年11月のデフリンピック開催に向け、2023年に東京都が開いた「音が見える、音を感じる競技会場の実現」をテーマにしたコンテストで優勝。本番での導入を目指している。

 開発者たちはこれまでも障害者の困りごとをデザインや技術の力で解決してきた。その過程で、聴覚障害者がスポーツ観戦する際、プレー中の音や歓声が聞こえないため、試合の進行状況や盛り上がり具合が分からず、疎外感を味わっていることを知った。

 方角の方山れいこ代表取締役…

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