博物館や美術館で何となく感じる“癒やし”の効果。森林浴にならい、「博物館浴」として科学的に効果を検証する実証実験が10日、北海道の釧路市立美術館であった。市内の釧路北陽高校3年生23人が参加し、美術鑑賞による継続的な効果を探る。
博物館浴は九州産業大地域共創学部の緒方泉特任教授(博物館学)が提唱し、2020年から取り組んでいる研究テーマ。これまでに全国のべ67施設で実験が行われ、966人が参加している。
この日は緒方さんの概要説明の後、生徒たちは血圧計を使って血圧と脈拍を測定。続く心理測定では「集中できない」「気がはりつめる」などの感情の動きを示す35項目について、5段階で自分の心理状態に近いものを回答用紙に書き込んだ。
その後は展示室に移動し、企画展示の「コレクションが出会う道東」を鑑賞した。神田日勝記念美術館(北海道鹿追町)とのコラボ企画で、神田日勝(1937~70)の作品と、市立美術館所蔵作品で似たテーマや技法の作家のもの計約40点を並べた企画だ。会話は禁止で20分間、思い思いに足を止めた。最後にもう一度、血圧計測定と回答用紙に記入した。生徒からは「リラックスできた」「頭がすっきりした」「疲れた」などの声が上がった。
緒方さんによると、これまでの研究で短時間の鑑賞でも血圧や脈拍が緩やかに下がり、活気や活力を示す数値が上がることが判明している。一方、プラネタリウムでの実験では眠ってしまう参加者が多く、活力が下がったこともあった。
今回の実験では平均値で怒りや疲労、緊張といった「ネガティブ状態」を表す数値が下がり、リラックス効果に影響があったという。
釧路での実験は同じ生徒を対…