配偶者に先立たれた人たちの「没イチ会」を主宰しているシニア生活文化研究所代表理事、小谷みどりさん(54)。42歳の時に同い年の夫を亡くし、人生が変わりました。死別して気づいたこと、ひとりで生きていくヒントについて聞きました。
――小谷さんは2000年に結婚。11年4月29日、シンガポール出張に出かけるはずの夫が朝、起きてこなかったそうですね。
起こしにいくと、ベッドで心臓が止まっていた。なぜ亡くなったのか。前の晩は元気で、話をしたのに。もしかして、私が殺したの?とも思った。解剖して調べられましたが、死因はわからず。いまもまだ亡くなったと実感できない。出張に行っているような気がします。
「かわいそう」と多くの人に言われました。でも、かわいそうで悲しいのは私ではなく、死んだ夫でしょう。やりたいことがいっぱいあっただろうに。「夫が亡くなったんだから笑わないほうがいい」とも。かけられる言葉の端々から死別者への偏見を感じました。
――その後の暮らしの変化は。
子どもがいなかったので、生活リズムは基本的に変わらなかったですね。大型連休中に葬儀も終わり、ふだん通りに出社。予定していた講演にも登壇しました。かわりなく仕事を続けたのがよかったのかもしれない。
毎朝、夫のためにお昼と夕飯の弁当二つを作っていたけれど、解放されました。家事ってひとのためにするんですね。夫がいるから料理していたなって。自分だけだと、手のこんだものは作らなくなった。
- 42歳で逝った夫に近い場所へ スペインの巡礼路をひとり歩く喪の旅
――死生学を教え、死の研究を続けてこられた。見方は変わりましたか。
死には二つの立場があると気…