ひきこもりの人の就労支援を行う「江戸川区駄菓子屋居場所よりみち屋」店長の石川玲子さん=2024年10月4日午前10時33分、東京都江戸川区瑞江2丁目、佐野楓撮影

 膨張を続ける東京で、人知れず厳しい状況に置かれている人たちがいます。総選挙で「未来」や「希望」が語られるなか、そこからこぼれ落ちる現場を知る人たちに、課題や政治に欠けているものを聞きます。

 家にこもり、社会との交流がない「ひきこもり」状態の人は、2022年度の内閣府の調査によると推計約146万人に上ります。そうした人たちの自立や就労を支援する「江戸川区駄菓子屋居場所 よりみち屋」の店長で、「しろひげ在宅診療所」職員の石川玲子さん(41)に、活動や課題について聞きました。

働こうとしても…

 江戸川区から委託され、昨年1月にオープンしました。社会福祉士や精神保健福祉士、保育士など10人で運営しています。講演やSNSで情報発信し、ひきこもり状態の方(以下、当事者という)にも情報が届くよう努めてきました。

 不登校や、人間関係に悩んで離職した人、心の病気――。きっかけはさまざまですが、一度ひきこもりの状態になった人が社会に戻るのは、簡単ではありません。

 働こうとしても、履歴書で空白の期間が長いと採用されづらい。就職できても、ペースについていけず、辞めるケースも多い。本人だけでなく家族も悩んでいます。そんな人たちへの居場所としてできたのが「よりみち屋」です。

「失敗しても大丈夫」

 コンセプトは「駄菓子屋」。子どもからお年寄りまで、誰もが気軽に来られるような、温かいイメージがありますよね。店頭には「うまい棒」やラムネなど、子どもの頃が懐かしくなるような駄菓子がたくさん並び、ここで当事者の方が週3日(最大9時間まで)、約半年間、就労体験ができます。履歴書は不要で、居場所の利用を経て、当事者やご家族との面談を行い、体験をスタートします。

 就労体験では、清掃や接客…

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