恐ろしい形相をした大型の魚「オオカミウオ」が、北海道・知床半島の沿岸に姿を見せている。アイヌ語の「チップカムイ」は「神の魚」という意味。ふだんは海の深い場所で暮らしているが、繁殖シーズンになると沿岸の浅場にやって来る。
水深6メートルの岩のすき間にたたずんでいたオスは、全長約1.3メートル。顔はしわだらけで、口を開くと鋭い牙がのぞく。
皮膚の表面には、細長い傷痕がいくつもある。これは、ほかのオスと格闘した際にかみつかれ、牙で切り裂かれたものだ。
水中写真家の関勝則さんは「メスを獲得するために、オスどうしが海中で激しい闘いを繰り広げる」と話す。
なんとか自分の子孫を残そうと、ときには血を流しながら、全身がボロボロになるまで闘うこともある。
迫力ある姿だが、ふだんはおとなしい性格で、主なエサは甲殻類や貝類など。自分から人に襲いかかることはないという。(山本智之)