遺体をつぶさにみられるように、検視官は懐中電灯を携帯している=宮坂奈津撮影

 数年前の、夏の暑い日の昼間だった。

 「家の中で高齢男性の遺体発見」

 神戸市内の警察署から通報が入り、県警刑事部捜査1課の勝裕樹巡査部長(43)は現場の一軒家に向かった。

 捜査1課は殺人、放火、強盗などの凶悪事件の捜査を担う。その中でも勝さんは「検視官室」に所属する。

 遺体を調べ、事件性の有無を見極める「検視官」の補助官。この日、すでに三つ目の現場だった。

通報は近所の人

 到着するとまず、事件性をうかがわせる異変はないか、家の外を確認する。中へ入ると、ベッドの上で眠るように男性が横たわっていた。

 手をあわせて、検視をする署に遺体を運ぶ準備を始めた。

 男性は死後数日たっているようにみえた。外傷はなく、死因の特定につながる要素は見つからなかった。

 解剖などをして死因を究明す…

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