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生まれたばかりの赤ちゃん

Re:Ron連載「普通ってなんですか」(第4回)

 中学生か高校生の頃だと思う。ふと、「男性の身体で生まれたかった」と思った。

 正確には、男性の身体になりたいのではなく、生理や出産を避けられないことが、耐え難いことに思われたのだ。

 私は生理痛が重くて、生理の度にまるで金づちで骨を砕かれ、腹に鉄球を投げ落とされたかのような痛みがあった。手足が氷のように冷たくなり、あまりの痛みに布団の上でのたうち回り、うんうんうなりながら転げまわった。胃腸の不調や頭痛、吐き気、猛烈なだるさなど、それに付随した不調も数えきれないほどあり、訳も分からず嘔吐(おうと)することもあった。それなのに、検査してもどこにも異常は見つからない。この痛みが来月も来るなら、いっそ一思いに殺してくれ。本気でそう思ったこともある。

 当時私が住んでいたのは地方で、男女の性別役割分担意識や規範がとても強い地域だった。だから、自分も大人になれば絶対に結婚し、出産しなければならない、と思っていた。実際、地元に残った同級生はみな早くに結婚して子どもを産んだ。出産は生理痛以上の痛みを伴うと思うと、恐ろしくて仕方がなかった。子どもを産みたくないなんて、今私が子どもだからそう思うのであって、きっと大人になれば、自然と子どもを欲しくなるに違いない。そう思っていた。しかし、年を重ねるにつれ、女性の身体で生まれたことを呪う気持ちはより一層強くなっていった。

 先日、日本保守党の代表である百田尚樹氏の少子化対策をめぐるユーチューブ番組での発言が世間を震撼(しんかん)させた。あくまでSFの話、と前置きはあった上で「女性は18歳から大学に行かさない」「25歳を超えて独身の場合は、生涯結婚できない法律にする」「30超えたら子宮摘出手術をするとか」と発言したのだ。

 そうすることで女性が〝焦り〟、子どもを早く産むのではないか、と言うのだ。

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名古屋市長選の応援演説に駆けつけ、冒頭に自身のユーチューブ番組での発言について弁明する日本保守党の百田尚樹代表=2024年11月10日、JR名古屋駅前、溝脇正撮影

 また後日、同党群馬支部長の伊藤純子氏が「#拡散RTのご協力をお願いいたします」とタグを付けXに以下の投稿をした。

 「高齢出産(医学的な定義は35歳以上)にはリスクが伴うのは事実です。妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの合併症、早産や流産、難産、帝王切開分娩(ぶんべん)、染色体異常症(ダウン症、エドワーズ症、パトウ症)、妊産婦死亡率の上昇、産後のトラブルなど。(中略)『高齢出産に伴うリスク』にあわせて『性道徳』についても高等教育の場でしっかり学ばせる必要があると強く感じています。どうしても代表の『発言』ばかりが注目されますが、発言の『本質』を見抜いていただくことを切に願っております」

 長々と女性の高齢出産のリスクを書いた投稿だったが、これに対し「女性はそんなことは知っている」「それでも若いうちに産めない事情がある」と反発の声が上がり、火に油を注ぐ結果となった。

 女性たちは、日々タイムリミットを突きつけられている。

根深い「女性原因論」

ここから続き

 「女の価値は若さ」だと言わ…

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