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赤ちゃんのころのピースと飼育員の高市敦広さん。「しろくまピース 命をめぐる25年の物語」(来年1月4日、NHK夜9時)から=NHK提供
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 団地育ちのホッキョクグマは25歳になった。愛媛県立とべ動物園のピース。飼育員の高市敦広さんが献身的に支えて人工哺育されたホッキョクグマで、国内最長の生存記録を更新している。NHKは1月4日に「しろくまピース 命をめぐる25年の物語」(夜9時)を放送する。

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 ピースが生まれたのは1999年12月2日。メスの双子だった。だが、母親は子育てができず、ピースと一緒に生まれた子を死なせてしまった。園は人工哺育することに決め、高市さんは夜になれば、団地の自宅へ連れて帰り、世話をした。その後も、ピースにはてんかんの発症などの試練が訪れたが、懸命に生きてきた。秘蔵映像を交えて、その歩みを振り返る。

 赤ちゃんのころ、ぬいぐるみのような愛らしい姿を見せたピースは今も人気者だ。溝渕貴裕チーフ・プロデューサーは「ピースと真剣に向き合う高市さんとの関係性は親子のよう。そして病に侵されながらも、懸命に生きる姿が多くの人の心を動かしている」と話す。

 ホッキョクグマの平均寿命が25~30歳と言われる中、ピースも老いの問題に直面している。昨年の冬、取材を長年続けている同僚の藤田怜子ディレクターからピースの異変についての報告が、溝渕さんにあった。食事をえり好みするようになり、健康管理のための血液検査も拒むように。高市さんも戸惑いを隠せない。どう向き合っていくのか――。1年かけて取材した。

 溝渕さんは「老いは、生きとし生けるものが避けられない問題。高市さんの今の苦悩と命との向き合い方を届けたいと思った」と話す。

 絵本をコンセプトに番組をつくった。「できるだけ言葉を少なくして、事実を淡々と重ねる。だからこそピースの命と向き合ってきた高市さんの思いが感じ取れる。いつまでも読み継がれるような番組になれば」。筋書きのない命の物語に新たな1ページが加わろうとしている。

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