出版された「サハリン島の植物」と高橋秀樹さん。手前にあるのは2015年に出版された「千島列島の植物」=2024年4月26日、札幌市北区の北大総合博物館、松田昌也撮影
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 若い頃は植物の名前に詳しくなく、野外調査の経験も少なかった研究者が、自ら集めたものだけでなく第2次世界大戦前からの標本も合わせ、サハリン(旧樺太)の植物を分類した植物図鑑「サハリン島の植物」(北海道大学出版会、698ページ)を出版した。著者は北海道大学名誉教授の高橋英樹さん(70)。ロシアによるウクライナ侵攻後、日ロ関係が悪化してサハリンに日本の研究者が調査に行くことが難しい中、貴重な資料となる。

 高橋さんは群馬県生まれで静岡県育ち。東北大で理学博士号を取得した。専門は植物形態学で、電子顕微鏡を使って微細な花粉を形づくる外壁の形態を研究していた。23年のNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった植物学者・牧野富太郎のように、屋外を歩き回ることが好きでもなく、植物の名前もよく知らず、野外調査の経験もほとんどなかった。

 それにもかかわらず、大作となる植物図鑑をまとめられたのは、学位取得の直後の1981年に札幌市の北大農学部付属植物園(当時)に助手として赴任したことがきっかけだった。

 入園者などから植物の名前を…

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