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絵本作家で、「だるまちゃんとてんぐちゃん」「からすのパンやさん」などで知られるかこさとしさん(1926~2018)の遺稿「くらげのパポちゃん」が絵本になり、2月5日に講談社から発売された。神奈川県藤沢市の自宅で21年に見つかった手書き原稿に、孫の中島加名(かめい)さん(30)が絵を付けた。
舞台は戦後間もないころ。クラゲのパポちゃんは、ある少年がもうすぐ働きはじめること、少年の父親が戦場へ向かう途中に船が沈んで亡くなっていたことを知る。少年が成長したことを、海にいる亡き父に伝えようと、パポちゃんは大海原に向かう。
原稿は計14枚。最後に「1950~55年」と記され、物語は完成していた。自宅を整理していた途中に見つけたという長女の鈴木万里さん(67)は「一読して心に響くものがあった」。
かこさんは2000年、クラゲの生態を描いた科学絵本「クラゲのふしぎびっくりばなし」を出した。昨夏、この本を担当した編集者が、下書き原稿に「ミズクラゲのパポより」という一文が添えられた、クラゲの線画を見つけたという。鈴木さんは「少なくとも45年間はパポちゃんがかこの頭の中に生き続けていた証し。それほどまでに大切に持っていたものをようやく本にしていいんだなと思った。かこもきっと待っているに違いない」と話す。
戦争テーマの絵本をつくりたい
かこさんには、戦争をテーマ…