豆腐が入った煮しめ(左)などの山の幸を始め、ナマコ(中央)やホヤ(中央右上)、カレイの煮付け(中央上)といった海の幸が並んだ米田和子さんの正月料理。餅(中央下)は、すりつぶしたクルミを砂糖などで味付けしたもの(右から2番目)をまぶしながら頂く=2025年1月1日午後、野田村、長谷文撮影

 岩手県野田村では元日、穏やかな日差しがそそいだ。米田(まいた)やすさん(75)が長年作り続けてきた豆腐を使い、親戚の和子さん(73)が調理した正月料理をいただいた。

 中でも「煮しめ」は、2人が住む集落で正月料理に欠かせない一品だ。ニンジン、ゴボウといった根菜類や、地元で「ハモ」と呼ばれるアナゴが入り、そのうまみが豆腐にしみこみ、いくらでも食べられる。「豆腐が主役の料理」。2人が教えてくれた。客が来れば温め直して、素早く出せる。もてなす側の助けとなる品でもある。

 集落の多くの家には大きな釜がある。各家庭で豆腐やみそなどが作られてきた。近頃は、核家族化などの影響で、釜で作るほどの量は必要なくなり、買って食べる人が増えたという。

 野田村では東日本大震災で、最大約18メートルの津波が襲い、37人が亡くなった。やすさんは震災以降、村内の加工場で「地域との関わりを持つために」豆腐を作り続けてきた。

 やすさんの豆腐は村内で製塩される「野田塩」から作られた「にがり」を使う。気候によっても、にがりや水分のあんばいなどは変わり、豆腐作りに正解はない。

 5年ほど前から後任を探してきた。ようやく知人を介して紹介された村内の新山健一さん(55)に巡り合い、昨年4月から教え伝え、今月豆腐作りを引き継いだ。

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