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和菓子「大の里」。リンゴを煮込んで手づくりしたあんを中に入れて、焼き上げてある。デザインは軍配のかたち=2024年9月19日、青森市、渡部耕平撮影
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 横綱級のおいしさかもしれない。そんな和菓子の名は「大の里」。大相撲で大の里関が番付を上げるごとに、売れ行きの勢いが増している。期待の表れか、秋場所前には一時、在庫がなくなったほど。人気の背景には、しこ名を通じた「初代」との縁がある。

 商品を手がけているのは、青森県藤崎町の「アントルメ佐藤菓子店」。1924(大正13)年創業で、100周年を迎える老舗だ。

 和菓子「大の里」は、リンゴの風味が楽しめる。藤崎町は、リンゴの品種「ふじ」発祥の地。地元のふじだけを使い、煮込んでほんのり甘く仕上げたあんを、桃山に包んで焼き上げてある。

 1960年には販売されていた記録が残っており、60年以上にわたって親しまれている。

 品名は、町出身の元大関「大ノ里」(1892~1938)にちなむ。大正から昭和の初めにかけて活躍した力士だ。小柄だったが稽古はだれよりも熱心で、弱い者に優しかった逸話も残っており、「相撲の神様」とたたえられている。

 菓子店の2代目社長が相撲好きで、新しい和菓子をつくる際、地元出身の名大関にあやかって命名した。しこ名をそのまま使うのは恐れ多いので、「ノ」の字を変えて「大の里」としたらしい。

 そんな思いつきが、半世紀以…

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