《Sで使える名簿求めてます》
《携帯、シム、リストなどあればなんでも購入いたします》
「S」は詐欺の隠語とみられる。SNS上には、名簿の買い取りを思わせるこうした書き込みが、いくつも出てくる。
個人情報を悪用した犯罪の手口に詳しいジャーナリスト多田文明氏によると、個人情報の取引価格は、1人あたり数円程度。出回っている別の名簿と照合して、購入履歴や家族の情報などを追加すると、取引価格は上がる。
「名寄せ」とよばれる手法だ。
特殊詐欺や強盗などの犯罪組織は、こうして精度が高められた名簿データをもとに、ターゲットとなる家や人を絞り込んでいくという。
通信販売で買い物をしたり、企業のアンケートに答えたり。そんな時に伝えた、あなたの住所や生年月日、クレジットカード番号などが流出すると、こうした名簿データの精度を高める情報として悪用される恐れがある。
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個人情報保護法の規定では、個人情報を買うこと自体は罪に問われない。ただ、流出したものだと知りながら手に入れることは違法となる。
国は過去の大規模流出を受け、個人情報を取引する名簿業者への規制を強めてきた。しかし、十分に機能していないことが明るみとなった事件が起きた。
情報元の確認「一切ありませんでした」
5月23日、岡山地裁津山支部。法廷の証言台に、上下紺色のスーツの男(63)が立った。
900万人分を超える顧客情報が、NTT西日本子会社から流出した事件。昨年10月に明るみに出た。名簿業者に顧客の氏名や住所を漏らしたとして起訴されたのは、子会社の元派遣社員だった。
計252回、2500万円弱…