細胞内の特定のたんぱく質をあっという間に消す――。植物に備わる仕組みにヒントを得て新技術を開発してきた国立遺伝学研究所の鐘巻将人教授らのグループが、2種類のたんぱく質を同時に消す方法を開発した。たんぱく質の働きを突き止めるための技術で、薬の開発研究にも役立ちそうだ。
特定の物質を除いて何が起こるかを調べると、その物質の役割が浮かびあがる。生命科学ではたんぱく質を除く実験が広く行われている。たとえば、たんぱく質を作るmRNAの働きをなくす方法があるが、たんぱく質を消すまでに2~3日かかる。たんぱく質が消えた効果なのか二次的な影響か判別できないことが課題になっていた。
鐘巻さんは、大阪大の助教となった2006年から、高速に特定のたんぱく質を消す方法を開発、改良を重ねてきた。きっかけは、専門が違う研究者から聞いた話だった。
動けない植物が環境の変化に応じて応答する際、たとえば光の方向に向かって伸びるときにオーキシンというホルモンが働く。オーキシンがある時だけ、目印がついた特定のたんぱく質が分解される。それをきっかけに必要な遺伝子が働きだす。
当時、この詳細な仕組みが発表され、植物学者の注目を集めていたが、ほかの分野では知られていなかった。この分解の仕組みを酵母の細胞に組み込むことに成功し、09年に発表した。
ただ、当時は特定のたんぱく…