国連気候変動会議(COP29)が11日、アゼルバイジャンの首都バクーで始まりました。約200の国・地域が一堂に会し、温室効果ガスを出す化石燃料の扱いや、途上国支援の資金目標などを議論します。2015年に国際ルール「パリ協定」が採択されてからまもなく10年。気候変動という人類共通の難題に対し、世界が一丸となって成果を残せるか。約2週間にわたり、現地のリアルな動きや交渉の裏側を記者が毎日報告します。(日付は現地時間)
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1日目(11月11日) 議長「最高の舞台で最大の問題に立ち向かう」
COP29は11日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕しました。
式の冒頭、前回COP28議長だったアラブ首長国連邦(UAE)のスルタン・アル・ジャベル氏が、今回の議長であるアゼルバイジャンのババエフ環境・天然資源相を壇上に招きました。成果文書の採択時にたたくハンマーを二人が掲げると、集まった約200の国・地域の関係者から大きな拍手が起こりました。
ババエフ氏はあいさつで、世界各地で起きている異常気象の事例に触れた上で「アゼルバイジャンは、最高の舞台で最大の問題に立ち向かうと決意した」と発言。「アゼルバイジャンは、橋をかけることができるが、渡るのは皆さんだ。世界のために連帯して前進しよう」と呼びかけました。
気候変動枠組み条約のスティル事務局長は「成果なしにバクーを去るわけにはいかない。今こそ、世界的な協力が機能停止に陥っていないことを示す時だ。ともに立ち上がろう」と語りました。
オープニングでは気勢を上げた形ですが、交渉は難航も予想されます。会合がどこへ向かうのか、これから2週間、見ていきたいと思います。
米大統領選の影響を懸念する声も早速広がっていました。
交渉に大きな影響力を持つ米国ですが、開幕直前にあった大統領選で、気候変動対策に否定的なトランプ氏が当選しました。トランプ氏は気候変動対策の国際ルール「パリ協定」からの脱退を示唆しており、COPでの合意内容に米国が将来従わなくなる可能性があります。このため、他国にとっては、意欲的な合意を目指す動機が弱まるおそれがあります。
関心の高さを示すように、11日夕に開かれた米バイデン政権で気候変動対策を担うポデスタ大統領上級顧問の会見には多くのメディアが詰めかけました。用意された席では足りず、立ち見も出ました。
ポデスタ氏は「先週の米国の結果は、明らかに非常に残念なものだった」と切り出しました。米国がバイデン政権で気候変動対策を強化してきたとしつつ、「次期政権が方向転換を図り、進歩の多くを覆そうとするのは明らか」と批判。トランプ氏によって米国はパリ協定から離脱することになるだろうと話しました。
一方、ポデスタ氏は「後退は避けられないかもしれないが、諦めることは許されない」と強調しました。中国とともに温室効果ガスの一つであるメタンガスの削減の取り組みを12日に打ち出すことを明らかにし、「(COP29の)成果文書が、世界を正しい方向へと導くことを期待している」と訴えました。
ただ、記者団からは当然、米国の影響力の低下を不安視する質問が飛びます。しかし、ポデスタ氏からの具体的な回答は乏しく、意気込みに反して懸念を払拭(ふっしょく)しきれていないように見えました。
環境NGOからは牽制(けんせい)する声が上がっています。グリーンピース東南アジアのイェブ・サノ氏は会見で、「トランプ氏の米大統領再選を理由に、他の国々が野心を縮小することは決して許されない」と釘を刺しました。その上で「ホワイトハウスに誰がいるのかに関係なく、気候変動の影響は誰もが受けている」などとして、途上国に対する資金支援の重要性を訴えました。
開幕前(11月10日) 高まる熱気、各国代表・メディアが続々集結
11日から始まる、国連気候…