再審開始の決定を受けて報道陣のインタビューに答える袴田巌さんの姉の秀子さん(中央)=2023年3月13日午後2時13分、東京都千代田区、井手さゆり撮影

 強盗殺人などの罪で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審判決に合わせ、朝日新聞社は8~9月、再審請求審をめぐる現行の法制度について、実際に再審請求審の経験がある裁判官らに見解を尋ねた。取材に応じた元裁判官15人、現役の裁判官3人の主な回答内容を紹介する。

  • 再審請求「手続きの不備で救済が困難に」 裁判官らが語る審理の内実

 1948年に現行刑事訴訟法が制定されてから70年以上、同法第4編「再審」の19カ条は改正されていない。再審請求をめぐる現行の法制度について「十分だ」と「不十分だ」の二択で尋ねたところ、「十分だ」の回答はなく、「不十分だ」が15人、無回答が3人だった。

 「不十分だ」と答えた15人に、具体的にどんな点が不十分だと思うか複数回答で尋ねた。最も多かったのは「証拠開示の規定がない」の13人で、「検察側の抗告が許される」(8人)▽「手続き(期日指定など)の規定がない」(7人)▽「証拠保全の規定がない」(5人)▽「再審請求審の公開規定がない」(3人)――が続いた。

 匿名で寄せられた意見では、ある現役の刑事裁判官が、証拠開示の規定がない点を「不十分」とした一方、「三審制の下で確定した事件なので、簡単に確定判決の効力を否定しづらい」と明かした。

 また、ある元東京高裁判事は、担当した再審請求事件の多くが再審事由がないことが明らかな事件だったとし「再審請求事件の処理について、公判と同様の堅い審理手続きを定めることが合理的とは思われない」とした。

 実名回答の主な意見は以下の通り。

 最高裁の統計によると、地裁に再審請求があった事件で、2021年に終局した165件のうち、受理から終局までの平均審理期間は9.7カ月だった。2~3年は11件、3年超も7件あった。

記事の後半では、回答内容の詳細を質問項目ごとに紹介しています。元検事総長と日本弁護士連合会の再審法実現本部長代行の談話もご覧いただけます。

 こうした再審請求審や無罪確…

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