野崎幸助さん(右)と須藤早貴被告=ジャーナリスト吉田隆氏撮影

 「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家、野崎幸助さん(当時77)が2018年、自宅2階で亡くなっているのが見つかりました。死因は、急性覚醒剤中毒。殺人などの罪で起訴されたのは、急死の3カ月前に結婚したばかりの元妻、須藤早貴被告(28)でした。須藤被告は無罪を主張しています。和歌山地裁で9月に始まった裁判員裁判について、これまでの概要を振り返ります。

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初公判(9月12日)

 須藤被告は、18年5月24日に和歌山県田辺市の野崎さん宅で、致死量を超える覚醒剤を野崎さんに摂取させ殺害したとして起訴された。この日の初公判で、須藤被告は「私は殺していませんし、覚醒剤を摂取もさせていません」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。

 検察側は冒頭陳述で、野崎さんの莫大(ばくだい)な遺産目当てに、須藤被告が覚醒剤を使った「完全犯罪」で殺害したと主張。結婚したその月から、インターネットで《完全犯罪》《薬物》《老人 死亡》などの言葉を検索していたと明らかにした。

須藤早貴被告=2024年9月12日、和歌山地裁、絵・岩崎絵里

第2回公判(9月13日)

 須藤被告の友人の供述調書が読み上げられた。結婚理由について、須藤被告から「月100万円もらえるからそんなおいしい話はない」と聞いたという。

 死亡後に現場に駆けつけた和歌山県警の警察官2人が出廷。「野崎さんが覚醒剤を常用していた形跡はなかった」

第5回公判(9月24日)

 野崎さんが殺害された18年5月の自宅捜索で、2階の洗面台にあった野崎さんの歯ブラシ、コップなどから覚醒剤の陽性反応があったと捜査員が証言。19年7月には東京都内にあった須藤被告宅で、被告のサングラスや靴、上着などから陽性反応があったという。

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第6回公判(9月27日)

 野崎さんの遺体を解剖した大学教授が、胃の内容物の覚醒剤濃度が著しく高かったことから口からの摂取と導き出したと証言した。

第7回公判(10月1日)

 覚醒剤の密売人だったという男性が出廷。覚醒剤が入った封筒を須藤被告に手渡して10万~12万円を受け取ったと証言した。

第9回公判(10月7日)

 野崎さん宅で当時、家事代行をしていた女性の妹が出廷。野崎さんが急死した当日、女性が午後4時前から午後7時半ごろまで妹宅にいたことを証言。死亡推定時刻を踏まえ、野崎さんは覚醒剤を午後4時50分~同8時に摂取したとみられている。

第10回公判(10月8日)

 野崎さん宅で当時、家事代行をしていた女性の供述調書を検察側が読み上げ。「(野崎さんは)須藤被告に強い不満を抱き、離婚したいと何度も言っていた」

第11回公判(10月10日)

 野崎さんの死亡当日に計4回…

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