過去3年間に50人以上にかみついたとみられる1頭のイルカが福井県沿岸にいます。どんな習性のイルカで、なぜ人に寄ってくるのか。Q&A形式で読み解きます。

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もしもイルカと遭遇したら…

Q 人をかむイルカがいるの?

A 朝日新聞が警察や海上保安庁の協力を得て記録を集計したところ、2022年から24年8月末までの約3年間に、福井県沿岸で少なくとも53人が負傷していたことが分かりました。ケガが軽くて通報しなかったり、自分で病院にいったりした場合は、記録から漏れているので、実際の被害はもっと大きそうです。

Q イルカの特徴は?

A 県警が警備艇から確認したところ、全長は2.5~3メートル。目撃者によると、体色はつややかなグレーで、体表に多数のかすり傷があります。生殖器の形から判断すると、雄のようです。

Q イルカの種類は?

A 水深30メートル以下の浅瀬を好むミナミハンドウイルカではないかと研究者はみています。水族館にいるハンドウイルカとよく似た種ですが、専門書によると、ハンドウイルカよりもクチバシが細長く、成熟とともにおなかに斑紋が出てきます。下あごが出る個体もいて、福井の個体にもその特徴があります。成長すると体重は200キロを超えます。

Q かんでいるのは1頭?

A 複数頭が同時に目撃された記録はなく、背びれの特徴が一致していることから、三重大学の森阪匡通教授(鯨類学)は「1頭の可能性が高い」とみています。現場で撮られた動画を見比べると、背びれに3カ所ほどネズミにかじられたような切れ込みがあるのが分かります。

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石川県珠洲市に現れた野生イルカ。背びれに3カ所ほど、特徴的な切れ込みがある=2020年9月、出村正幸さん提供

Q イルカは暖かい海にいる印象だけど?

A ミナミハンドウイルカは、インド洋と西太平洋の温暖な浅瀬にすんでいます。日本では天草市(熊本県)や伊豆諸島(東京都)などに群れがいます。日本海側では北陸や東北まで泳ぐことがあり、北風がブロックされる七尾湾(石川県)で定着した個体群もいます。

Q なぜ人をかむの?…

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