写真・図版
NHK杯男子フリーを終え、優勝した鍵山優真(左)と記念撮影する壷井達也=小林一茂撮影
  • 写真・図版

 普段は穏やかな21歳が、力強く右の拳を握りしめていた。

 11月に東京で開催されたフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯。男子フリーに臨んだ壷井達也=シスメックス=は演技冒頭、4回転サルコー―3回転トーループを成功させた。続く4回転サルコーでも加点を引き出し、勢いに乗る。ミスはあっても、その後のジャンプも全て着氷。166・50点は、ショートプログラム(SP)に続く自己ベスト更新だった。

 「プログラムが終わった瞬間、泣きそうでした」

  • フィギュアスケート特集はこちら

 総合3位で、自身初となるGPシリーズの表彰台。歩んできた道のりを踏まえれば、思いがあふれるのは当然だった。

 ジュニア時代から将来を期待されてきた。だが、シニアでは思い描いた通りにはいかなかった。シニア男子で勝負していくには、複数の4回転ジャンプが必須になりつつある。その中にあって、壷井が跳べる4回転はサルコーのみ。

 徐々に苦境に陥った。

 「年下の選手が4回転をバン…

共有