この写真を、将来どんな気持ちで見返すだろうか。家庭裁判所の前で、大滝洸さん(26)は記念写真におさまった。オーダーメイドのスーツできめ、笑みを浮かべていた。
大滝さんはトランスジェンダー男性。体つきを男性に近づけるため、ホルモン治療を受けているが、戸籍上は「女」だ。
昨年10月、人生を変えるニュースがあった。トランスジェンダーが戸籍上の性別を変更するのに、生殖能力を失わせる手術が必要とする性同一性障害特例法の要件を、最高裁が「違憲」とした。
大滝さんは、戸籍上の性別を女から男に変更する申し立てを裁判所にした。弁護士には頼らず、一人で手続きを進めている。
「誰かの役に立てれば」。そんな思いで、必要な書類の集め方や費用、裁判所とのやりとりをSNSで発信。性別違和を感じ始めた当時の孤独や葛藤、改名をした経緯もつづるようになった。
16歳の自分へ、今伝えたい感謝
「16歳の自分へ」。そんな文章を、裁判所前で撮った写真と共にX(旧ツイッター)に投稿した。「10年前のあなたが行動してくれなかったら 今の私はありません。感謝しています」
性別違和を明確に感じたのは、女子高に通っていた16歳の頃。その後、自力で改名の手続きをし、就職活動で「トランスジェンダー男性には一番ハードルが高そうな業界」にあえて挑みました。性的少数者であることを隠さず、会社員として忙しい日々を送る大滝さん。SNSで発信し、当事者やその家族らの相談に乗るようになった転機はーー。
10年前。外出の際には黒い…