詐欺被害を防いだときの状況について話す岡田聖也さん(右)=2024年11月21日午後2時20分、高松市多肥上町、土居恭子撮影

 「インターネットで商売を始めるから500万円を引き出したい」

 10月18日午前、高松信用金庫一宮支店(高松市一宮町)に70代の女性が来店し、こう話した。

 対応したのは入庫2年目の岡田聖也さん(24)。「何度か会っているお客さんでしたが、いつもと違う様子でした」

 同金庫では、引き出しや振り込みの金額が大きいときに用途や理由を聞くようにしており、岡田さんは、振込先の人間と会ったことがあるかなどを尋ねた。その中で、「振込先の口座が15分ごとに変わる」と聞き、「怪しい」と判断。女性の気持ちに配慮し、「詐欺だと思うとは言わないように、不審な点を伝えました」。

 しかし女性は「信用している人やから大丈夫」とかたくなだった。30分を超えて説得しても納得してもらえず、警察を呼ぶことになった。

 高松南署の署員2人が話を聞いた。女性は相手とLINEでやりとりしていて会ったことはないが、「免許証を見せてもらったから信用できる」と言う。

 LINEで送られてきていた免許証の写真を見ると、住所は東京都。そこで署員が気づいた。

 「『都』が免許証で使わないはずの旧字体です。偽造です」

 女性は冷静になり、詐欺だと理解したという。

 その後、女性は相手に「商売がうまくいったら結婚しよう」と言われており、ロマンス詐欺に遭いかけていたことが分かった。岡田さんが受け付けをしてから、2時間ほどが経っていた。

 11月21日、高松南署と高松市防犯協会は、高松信用金庫の岡田さんと支店長の河地雅人さん(46)に詐欺被害を防いだとして感謝状を贈った。

 岡田さんは「自分の一言、行動で相手の人生を変えることができてすごくうれしい。仕事を頑張るモチベーションにつながる。救えてよかった」と笑顔で話した。

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