大学の研究成果をビジネスとして収益化につなげる大学発ベンチャーの動きが広がる中、九州大学の新たな挑戦が注目を集めている。

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九大OIP代表取締役の大西晋嗣さん=2025年2月25日、福岡市西区、江口悟撮影

 九大は昨年4月、大学内の産学官連携組織「オープンイノベーションプラットフォーム(OIP)」を大学本体から切り離して独立させ、100%出資の子会社「九大OIP」を設立した。九大の研究からベンチャー企業創出を後押しし、企業などとの共同研究につなげる役割を担う。

意思決定の迅速化と正社員化

 九大OIPを株式会社にした一番の狙いは意思決定の迅速化だ。また、大学本体では有期雇用となる人材を、無期雇用の正社員として採用できるようにもなった。

 傘下に様々な分野の事業子会社をつくり、研究成果の事業化を進める。ファンドを通じた起業支援も進め、事業が成功すると大学側の収益につながる仕組みの確立もめざす。

代表取締役・大西晋嗣さんが語る戦略

 九大OIPトップとして経営を担うのは代表取締役の大西晋嗣さん(48)だ。大学本体の教授や副理事も兼ね、産学官連携の旗振り役となっている。

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九大OIP代表取締役の大西晋嗣さん=2025年2月25日、福岡市西区、江口悟撮影

 京都大学大学院で農業工学を専攻。大学の研究成果が社会に役立てられることに魅力を感じ、知的財産や特許を専門とするようになったという。

 別の企業を経て、京大などが設立した株式会社「関西ティー・エル・オー」(現TLO京都)に入社。研究成果を企業につなぐ仕事を手がけ、社長も務めた。手腕を期待され、20年に九大に招かれた。

効果大きい正社員化「より高度な課題に取り組める」

 大西さんが経験から痛感する…

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