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就任会見で記者の質問に答える北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督=2021年11月4日、札幌市、日吉健吾撮影
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 「優勝なんて、一切めざしません」

 2021年秋。北海道日本ハムファイターズの監督就任会見で飛び出した新庄剛志の言葉に、かつて専属広報だった球団職員の荒井修光(のぶあき)さん(51)は「らしいな」と思った。

 新庄が選手として日本ハムに在籍した3年間、専属広報として支えた。

 スーパースターの傍らで目にしたのは、勝利への強い執念だった。

 打撃で試したいことがあれば、ナイターがある日でも朝9時から札幌ドームの室内練習場に現れた。約3時間、徹底的に打ち込んだ後、シャワーを浴び、まるでたった今来たかのように全体練習へと合流した。

 今年のオープン戦で、荒井さんがあいさつのために監督室を訪れた際も、分析のためのタブレット端末を真剣なまなざしで見つめていた。

 「綿密に準備して、頭をフル回転させて表現する。やっぱり変わらないと感じた」

 誰よりも勝ちに飢えている。就任会見での発言も、荒井さんはこう読み取った。「(集大成となる3年目に)優勝するために、今、何が必要かを逆算していたのではないか」

 監督1年目は宣言通り、ケガで離脱していた外国人をのぞき、支配下選手全員に1軍を経験させた。

 最下位に沈んだ1、2年目で試した奇策の数々は、今季のチーム戦術へと昇華した。

 チームを44年ぶりの日本一に導いた現役時代も同じだった。批判されてもぶれない信念が、3年目の飛躍に結びついた。

 言葉に力を持つ人だ。専属広報としての日々が始まってすぐ、こんな質問をされた。

 「家を出る前にさ、靴ひもが切れたらどう思う?」

 真意を測れぬまま荒井さんは「ちょっと嫌だなと思います」と答えた。

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 新庄はこう続けた…

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