袴田巌さん(88)の弁護は当初、刑事事件の専門ではなく、地域の民事事件も扱う地元・浜松などの弁護士3人が、家族からの依頼で引き受けた。
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1968年の静岡地裁判決によると、逮捕から自白までに弁護士が袴田さんと接見した時間は3回、計37分。手厚い弁護活動とはいえなかった。
初めての接見は逮捕5日目の66年8月22日の7分間。そのうち約5分の会話が、県警に保管されていたテープに残っていた。
袴田さんは「どういうことを話したら」と、取り調べに不安を感じている様子。弁護人は「別に普通でいい」と答える。
事件と無関係だと伝えようとしても、弁護人は「うん、うん」と言うだけ。途中、袴田さんの家族や差し入れの心配はするが、最後まで聴取への助言はなかった。
現在の主任弁護人・小川秀世弁護士(72)は、「被疑者が事件に関わっているのかどうかを聞かずして弁護活動はできない。このときの接見では何も聞いていないし、明らかに不十分だ」と指摘する。
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