宮城4区・被災地の声

 「枝っこの枝っこが、私らだべなあ」

 衆院選が公示された15日、宮城県石巻市雄勝町の佐藤美千代さん(74)は、自宅で選挙の様子を伝えるテレビニュースを見ながら、つぶやいた。東日本大震災の被災地の声をたばねて「太い幹」にしてくれていた宮城選出の議員が1人減り、自分たちの声は「か細い小枝のようになるんでねえか」と案じている。

 宮城は「一票の格差」を是正するため、小選挙区が1減となった全国10県のうちの一つ。雄勝町のある石巻市は、仙台市に近い内陸部の都市などと共に宮城4区になった。

 4千人以上いた町の人口は、震災後の13年間で4分の1の1千人まで減った。高齢化率は6割近い。

 佐藤さんは夫婦2人で切り盛りしてきた青果店「八百清」と自宅を津波で流された。子や孫にふるさとを残してあげたいと、仮設商店街を経てトレーラーハウスで店を再建した。

 だが、高台移転を待ちきれず、多くの仲間が町を去った。客足は戻らず、夫の勝則さんも73歳で先立ち、2017年に店を閉じた。いま、町唯一の診療所での定番の会話は「今日も誰々さんが、お隠れになったね」という葬式の話だという。

 震災後、国は被災地の復興に30兆円以上の巨費を投じた。復興事業の多くは、25年度末までの第2期復興・創生期間の終了とともに終わると予想されている。「自立」が求められるが、基幹産業の漁業は磯焼け、不漁、担い手不足で低迷が続く。

 「復興に疲れ、あきらめが漂ってきている」

 雄勝町で生まれ育った阿部晃成さん(36)は語る。慶応大大学院を経て、宮城大と金沢大で災害社会学を研究しながら、能登半島にも通う。ふたつの被災地で目にしたのは、「効率の悪い地方は捨てる」という集落再編の議論だった。災害が多発し、過疎が進み、議員が減る。この構図が進めば、「日本中のまちが取捨選択の対象となりかねない」と語る。

 第2次安倍政権が地方創生を掲げて今年で10年。コロナ禍を経てなお東京一極集中による都市の過密と若者の流出による地方の過疎は止まらない。初代地方創生相を務めた石破茂首相は、今回の解散を「日本創生解散」と名付けた。野党も地方回帰の加速や地方活性化を公約に掲げる。(渡辺洋介)

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