スマホやタブレットの画面に出てくるAI(人工知能)キャラクターと、いつでも、どこでも、何度でも英会話ができる。そんなサービスが「スピークバディ」だ。提供開始から8年、ダウンロード数は400万を超える。

 創業者の立石剛史さん(41)は「英語ダメダメ」だった。大病や大けがで死を3度、覚悟した。完全に克服して健康そのものだが、「生き延びた命を社会の役に立てたい」と思ったからこそ、このサービスができた。

スピークバディの立石剛史さんと、AIキャラたち=東京都内

 be動詞が理解できない

 父は建設や不動産の会社を経営。立石少年は慶応幼稚舎に進む。気ままな小学生時代を過ごし、中学生になる。

 英語の授業がやってきた。

 is/am/are

 立石さんは思った。

 〈何だこれ?〉

 be動詞の存在が理解できなかったのだ。

 〈ボクは日本人、英語はいらない!〉

 英語の勉強を放棄したので、成績は限りなくゼロ点に近かった。

 中学3年のころから、両親がけんかばかりするようになった。父の会社がおかしいと少年心に感じた。銀行や証券会社が破綻(はたん)していた時代である。

稼げる仕事につく

 そして高3の夏、父の会社が倒産した。負債は200億円だった、と聞いた。家を差し押さえられ、小さなアパートで暮らすことに。マージャン店などでバイトを始めた。

 〈稼げる仕事につくぞ〉。慶応大の商学部に進む。お金がないのに授業料を出してくれた母に感謝しつつ、公認会計士の資格をとるため、多いときは一日14時間の猛勉強。20歳で合格した。

 外資系の投資銀行は稼げる、と聞いた。〈外資か~、英語できないからな~〉

 友だちに「英語は話せませんが、一生懸命勉強しますので問題ありません」を英訳してもらい、丸覚えした。

 米系の投資銀行の面接。英語で質問されるが、分かるわけがない。立石さんは覚えた通りに言った。

 「アイ キャント スピーク イングリッシュ。バット、スタディ ハード。ソー、ノー プロブレム」

会議でぼろくそに

 場が凍りついた。でも、公認会計士の資格をとった実績を認めてくれたのか、まさかの内定。入社まで1年ほどある。まずは、中学生の参考書を買って、現在進行形、受動態……。〈be動詞って偉大だな~〉

 入社するころには、それなり…

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