
東日本大震災の発生から14年。全盲・弱視の児童、生徒16人が通う松江市西浜佐陀町の島根県立盲学校では11日、教職員らが改めて防災への思いを強めた。
地震発生時刻の午後2時46分。教職員らがおのおの黙禱(もくとう)を捧げた。飯塚まどかさん(54)は、同校に隣接する寄宿舎前で被災者の冥福を祈り、「生徒さんの命をお守りしないといけない」と誓った。
飯塚さんは同校の寄宿舎指導員。平日を寄宿舎で過ごす6人の生徒たちの世話や指導をしている。2年前に赴任して以来、防災教育にも力を注いできた。
「先生、だれかが助けに来てくれると思うけど、どこで待っていたらいい」
昨年1月、能登半島地震直後。冬休みを終えて寄宿舎に戻ってきた生徒の1人がそんな不安を口にした。
寄宿生は全盲1人と弱視5人。弱視者は手の届く範囲でも視界はぼやけ、視野も狭い。暗くなるとほとんど見えなくなる弱視者もいる。災害が起きたとき、当直職員がすぐに駆けつけられるか分からない中、「自分の身は自分で守る」。そんな意識づけが必要だと感じた。
まず頼ったのは地域の自主防災組織に所属する元消防職員。「避難時の心配事を聞き取り、生徒の身になって避難計画を作りなさい」と助言を受けた。そして「防災出前講座を活用したらいい」と勧められ、市防災危機管理課に依頼した。
講座は昨年6~9月、寄宿生向けに3回、職員向けに1回開かれた。生徒たちは「助けて欲しいと伝えられる勇気を持つこと」「1人で家にいる時に備えて、避難方法を家族と話し合うこと」などの心構えを学んだ。非常時に必要なものを詰め込んだ「防災マイボトル」も作った。
避難所体験もあった。簡易ベッドや簡易トイレを組み立てたり、非常食を作ったりもした。高等部2年の岡桐生(とうき)さん(17)は「避難所での暮らしをイメージすることができた」。石原敏彦校長も「視覚障害者は頭の中にイメージのマップを形づくっていくので体験が重要」と振り返る。
災害はいつ発生するか分からない。飯塚さんは「学んだことが途切れないよう、繰り返し訓練していきたい」と話す。