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愛知県警岡崎署の留置場で2022年12月に勾留中の男性(当時43)が死亡した事件をめぐり、男性の父親が県に賠償を求めている訴訟の弁論が21日、名古屋地裁であった。遺族側は、名古屋地検から開示された当時留置主任官だった元警部=業務上過失致死罪で罰金80万円の略式命令、依願退職=の供述調書などの捜査記録を証拠として提出した。
弁論で、遺族側の代理人弁護士は開示された記録をもとに、元警部が拘束中の男性を踏みつけるなどの暴行を加えた▽元警部が同僚に対し「縛ることもストレス発散だと思ってやってもらえればいいと思います」などと発言▽男性の死亡4日前、警察医が「男性をすぐに入院させた方がいい」と意見していた▽男性のための診療護送や栄養剤準備を同僚が提案したが、元警部が断った――ことなどを主張した。
訴状などによると、精神疾患のあった男性は22年11月25日に公務執行妨害の疑いで逮捕され、署内の留置場内で暴れたことなどを理由に裸のまま「戒具」と呼ばれるベルト手錠などで拘束されるなどした。延べ約140時間拘束され、同年12月4日未明に亡くなった。
原告側は戒具の違法な使用や元警部らの虐待などが男性の死につながったとして、県側に約1億円の賠償を請求。県側は「法的責任について争うことは考えていない」とし、遺族との和解をめざす方針を示している。
この事件をめぐっては、県警が23年12月に業務上過失致死罪などで当時の署員9人を書類送検。同罪で略式起訴された元警部には、24年2月に名古屋簡裁から略式命令が出されている。