米国のボクシング専門誌「リングマガジン」でメインカメラマンを務めたこともある世界的ボクシングフォトグラファーの福田直樹さん(58)は、井上尚弥-ルイス・ネリ戦をリングサイドから撮影した。この東京ドームでの一戦を見て感じたことを語ってもらった。
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井上選手が相手だったらもう少し怖がって、攻めてこないかなと思ったんですけど、ネリ選手が意外に勇敢に打ってきたなと思いました。
早いペースで来られると井上選手の方も、ネリ選手のパンチは軌道が特殊なので、対応しにくかったでしょうね。1回の井上選手のダウンは驚きました。
ただ、意外にダウンを喫して、アドレナリンが出たというか、興奮状態になりながら、そこで一段さらに強くなったような気がします。
ネリ選手も一気に仕留めにいかなかったのは、ダウンを奪ったのに、向こうがどんどん元気になっているような雰囲気を感じたんじゃないでしょうか。
2回以降、井上選手はコーナーから「リセットしろ」と言われていたこともあり、リセットどころかうまく戦い方を合わせにいけていたような気がします。
リングサイドで聞いたネリ選手のパンチは鈍い音で、井上選手の方はキレもパワーもある感じがしました。
井上選手は笑いながら戦っているし、テンションがどんどん上がっているようでした。楽しそうに戦っていました。その表情や雰囲気を見て、もう負けはしないだろうという感じがしていました。ネリ選手から奪った3度のダウン。背中しか見えなかったり、遠かったり、ポジションが悪かったのが残念です。
カナダのトロント、アメリカのヒューストン、ロサンゼルスなど、こういう大きな会場で撮ったことはありましたが、日本人がメインだったことはありません。
リングサイドの歓声に加えて、外から波みたいに遅れて歓声が聞こえてきました。撮っていて、広いところでやっているなという印象が強かったです。
東京ドーム開催は、すごいことだと思いました。これからのボクシングの人気につながればいいなと思います。(聞き手・佐藤祐生)