8日は、故高坂正堯(まさたか)・元京都大学教授の生誕90周年にあたります。昨年秋に、高坂氏の講演録をまとめた「歴史としての二十世紀」(新潮選書)が出版されるなど、現実主義に基づいた国際政治を唱えた高坂氏の理論に再び注目が集まっています。東京外国語大学の吉崎知典特任教授(国際安全保障論)は、高坂氏との思い出に触れながら、「大勢に流されない一方で、相手を論破することに夢中にならず、異なる意見に耳を傾ける人だった」と語ります。
――高坂氏と面会したことがあるのですか。
慶応大法学部2年だった1982年、高坂さんを学園祭に招き、「国際政治の将来」という演目で語っていただきました。当時は、旧ソ連の(欧州に照準を合わせた)中距離弾道ミサイルSS20の配備が話題になったほか、レーガン米大統領がソ連を「悪の帝国」と呼ぶなど、第2次冷戦の時代で、一部で核戦争を懸念する声も出ていました。
高坂さんはキューバ危機が起きた62年10月の直前まで米ハーバード大客員研究員を務めていました。その経験を語りながら、「キューバ危機当時に比べれば、まだ大丈夫だ。核戦争は起きないよ」と語っていました。阪神タイガースの大ファンで、京都弁で柔らかく包み込むように語り掛ける口調が印象に残っています。
■キッシンジャー訪中の7年前…