大阪・新世界で80年近く続いた将棋場「三桂(さんけい)クラブ」が6月30日で幕を下ろす。新世界は明治から昭和初期に活躍した将棋棋士・阪田三吉が拠点にした地。かつては複数の将棋場でにぎわったが、現在は三桂クラブが唯一営業してきた。常連客からは、愛着のある場所がなくなることを惜しむ声があがっている。
パチ、パチ、パチ。駒を将棋盤に打つ音が広い店内に響く。並んだ盤を挟み、常連客どうしが対戦する様子を、窓の外を通りかかる外国人観光客たちが物珍しそうに眺めていく。
通天閣から徒歩5分、串カツ屋や射的屋が並ぶ道幅3メートルに満たない細いアーケード街「ジャンジャン横町」。その一角、昭和にタイムスリップしたような雰囲気が残るのが三桂クラブだ。
映画のロケにも幾度と使われた店内は20メートルほどの奥行きに、約50の将棋盤や碁盤が並ぶ。
店が始まった正確な時期ははっきりしない。「もとは祖父がやっていた喫茶店の奥でお客さんが将棋を指してたのが始まりみたいです」と話すのは3代目「席主」の伊達利雄さん(59)。戦後すぐあたりに、将棋メインの店に業態を変えたらしい。
新世界は将棋棋士阪田三吉が拠点にした場所。通天閣の下には、阪田が死後に日本将棋連盟から贈られた位「王将」の文字を刻んだ石碑が建つ。
三桂には、賭け将棋で生計を…