門前茶屋を継いだ早川均さん=岐阜県中津川市蛭川
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 満月の日にお参りすると御利益がある――。「満月参り」で知られる岐阜県中津川市の天佑(てんゆう)稲荷の門前にある茶屋は、店主の高齢化で閉店の危機にあった。店を継ぐと声を上げたのは、福祉施設で働いていた常連客だった。60歳を過ぎて踏み出した新たな道。どんな思いで決断したのか。

 5月23日、この日は満月。門前茶屋には、朝から参拝客が続々と訪れていた。

 参拝客はここでお皿に載った30円の油揚げを買ってお供えする。

 油揚げを買いに来た女性(94)は、30キロほど離れた土岐市から来た。「60年前に家を建てるときにお世話になって」以来、毎月、満月参りを続けているという。

 「茶屋がなくなるかもと聞いて困っちゃうと思っていた。継いでくれる人がいて良かった」

 2月から、この門前茶屋を切り盛りするのは、早川均さん(63)。元々は店の常連客だった。

 自宅は車で20分ほどの場所にあり、5年ほど前から、定期的に頼まれている知人宅の草刈りの帰りに門前茶屋に寄り、名物の五平餅やおでん、うどんを食べていた。

「この店を残したい」

 「店をたたむらしい」。早川さんが知人から聞いたのは昨年3月ごろ。

 その時は「もったいないなあ」とひとごとのように聞いていたが、それから、半年経っても後継者が見つからないと聞き、心が動いた。

 「50年以上も続く店のたた…

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