ウクライナの首都キーウから北西に約50キロの街、ボロジャンカ。2022年4月、エストニア人のクリスト・エン・バガさん(27)は、目の前に広がるがれきを前に立ち尽くした。そして確信した。「ロシアの足音は、確実に私たちの国にまで忍び寄っている」と。
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その2カ月前、ウクライナへの全面侵攻を始めたロシア軍は、キーウの制圧を狙って進軍。その経路にあったボロジャンカは、激しく破壊された。
バガさんが訪れたのは、ロシア軍が撤退してまだ1週間しか経っていないころだった。人々が「ロシア軍はこの街を地球上から消し去ってしまった」と表現するほど、ひどい惨状だった。
ロシアと国境を接するバルト三国の一つ、エストニアは、ロシアにとって欧州との「緩衝地帯」とも言われる。
「エストニアを守りたい」
当時、エストニア国防相の顧問だったバガさんは、翌年の総選挙に出馬することを決意した。
国会議員となった。ボロジャンカで見た景色と、あの時抱いた「危機感」を持ち続けた。
これを多くの人と共有するにはどうすればいいのか――。
思いついたのが、エストニア…