長崎県の代表として第106回全国高校野球選手権大会に出場した創成館の甲子園での戦いに同行した。印象に残ったのは、夏の地方大会前にようやくエースナンバーを勝ち取った主戦の村田昊徽(ごうき)投手(3年)の成長ぶりだった。
村田投手は緊張すると力むくせがあり、エースナンバー獲得に苦労したという。夏の地方大会前にようやくエースの座を獲得した。地方大会の決勝の清峰戦と、甲子園の1回戦、白樺学園(北北海道)戦は完封だった。稙田龍生監督は「清峰戦で1人で投げきった経験が成長のきっかけになったかもしれない」と喜んだ。
継投で六回から登板した2回戦では8強入りを果たした大社(島根)に4失点したが、被安打は3だった。緊張による力みを語っていた村田投手が大球場で活躍する様子は、記者席で見ていてまぶしく思えた。
甲子園を経て、村田投手はどうしているのか気になった。12月の中旬に話を聞きに行った。
村田投手は今も野球部の球場で練習をしていた。九州の大学に進学が決まり、野球部で活躍できるように準備を進めているという。体がひとまわり大きくなり、髪も少しのびた村田投手は大人びた印象を受けた。
甲子園出場後の思いを聞いた。「出場できたという達成感はすごくありました。甲子園の切符は運も実力も必要で、その経験が得られたことは感謝しないと」と振り返る。
大社戦で競り負けた悔しさは今も残る。「甲子園では声援のすごさに力が入った部分があった。そこは悔しい」という。
今は思いを未来に向けている。球速をつけるために筋肉づくりに集中。体重は4~5キロ増えた。現状の球速は140キロ台だが、大学では150キロを目指したいという。目標はプロ選手だ。
「進学すると、正選手を争う重圧がまたかかるよね」と聞いてみた。村田投手は「心を落ち着けるには、どのような動きをすれば良いのか方法を極めたい」と話す。
今、思うのは注目される選手になる大切さ。
「甲子園には行ったけど、知名度はまだまだ」と村田投手は言う。「まず、人に見てもらわないと評価さえしてもらえない」
目標とする投手像を聞くと、しばらく考えた後に「勝つことができる投手」と答えた。成長を感じさせる口調だった。
来春の第97回選抜高校野球大会に目を向けると、21世紀枠に壱岐が選ばれる可能性がある。選考結果が発表される1月24日に期待したい。