地球温暖化対策の一つとして知られる「気候工学」。即効性などへの期待の一方、警戒感も根強い。実証事業の中には反発から中断を余儀なくされたものもある。国際的なルール作りなどの必要性も高まっている。

 2~3月にケニアで開かれた国連環境総会で、スイスが気候工学の技術について評価するための専門家組織の立ち上げを提案した。日本政府の交渉担当者によると、気候工学の実践が現実味を帯びる中で、各国政府間で理解を深める意図がスイスにはあったという。

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 大気中の二酸化炭素(CO2)が増えると、地球にさす太陽光の熱が逃げにくくなり、地球が温暖化する。これに対し、人工的にまいた化学物質や粉末で日射をはね返す技術の総称が「気候工学(ジオエンジニアリング)」だ。

 世界気象機関(WMO)の1月の発表によれば、昨年の世界の平均気温は観測史上最高を更新し、1850~1900年に比べて約1.45度上昇。パリ協定がめざす1.5度目標までの余裕はどんどん狭まっている。

記録的な干ばつで干上がった田んぼ=2019年9月、タイ北部ノンブア

 遠くない将来、さらなる気温上昇によって干ばつが特定地域で数年続くなどの重大な影響が表れた場合にどうしたいいのか。一つの対応策として期待されるのが、比較的低コストで気温を一時的に下げられる可能性のある気候工学だ。

「温暖化対策から社会の目をそらす」

 ただ、スイスの提案に対し…

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