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会見で病院経営の厳しい状況について訴える、全日本病院協会の猪口雄二会長(中央)ら=2025年1月22日午後3時31分、東京都千代田区、足立菜摘撮影

 物価や人件費の上昇が医療機関の経営を直撃している。独立行政法人「福祉医療機構」が1月31日に公表した調査結果によると、2023年度は一般病院の半数が赤字。医業の利益率も、統計を公表している07年度以降で過去最低だった。病院団体は「経営は破綻(はたん)寸前」とし、厚生労働省に緊急的な財政支援などを要望している。

 福祉医療機構の調査によると、精神科病院などを除いた一般病院の医業利益率は、19年度までプラスを維持してきた。だが、コロナ禍でマイナス1.1%にまで落ち込み、23年度はさらにマイナス2.3%まで下がった。

 コロナ禍では医業利益率がマイナスでも、コロナ対応の補助金があり、経常収支では7割ほどの病院が黒字だった。しかし、23年度に補助金が打ち切られ、一気に経営が悪くなった。機構が調査した一般病院1446施設のうち、赤字は51.0%に上り、データを公表している10年度以降で最も多かった。22年度は32.5%だった。

厚労省に支援要望、「病院医療は崩壊していく」

 日本病院会や全日本病院協会、日本医療法人協会など5団体は先月22日、福岡資麿厚労相に財政支援措置などを求めた。日本病院会の相沢孝夫会長は記者会見で「収入増をはるかに上回るスピードで経費が増えている。何とかしないと我が国の病院医療は崩壊していくだろう」と訴えた。

 医療機関に支払われる診療報酬は公定価格として価格が決まっており、医療機関の判断で物価などが上昇した分の経費を上乗せできない。

 一方の診療報酬は、物価上昇に見合うだけ価格が引き上げられていない。24年度の改定では、医療者の人件費などにまわる部分はプラス0.88%になったが、「非常に低い」という。

 日本病院会など3団体が24年6月時点の医業利益率を調べると、マイナス9.8%となり、前年同時期より2.3ポイントも下がった。

 日本医療法人協会の加納繁照会長は「民間病院はもう絶滅してしまうんじゃないか、それほど非常に厳しい状況にある」と会見で強調した。次の26年の診療報酬改定を待たずに現状の診療報酬のあり方を改めるよう訴えた。

春以降も「メーカーが値上げ予告」

 今回の厚労省への要望に加わ…

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