うたをよむ 上野佐緒

 歌壇俳壇面のコラム「うたをよむ」。今回は「俳句四季」編集長の上野佐緒さんが、格差社会と言われる現代にあってこれからも俳句が「庶民の詩」たりえるのか、三つの句を紹介しながらつづります。

 「俳句は庶民の詩」という言葉が好きだ。現代は民主主義の世の中で、身分制度はないということになっているが、いわゆる「経済格差」は最近になって広がってきているように思える。奨学金の返済に苦しむ人、不安定な非正規雇用でハードな仕事を続けざるを得ない人……このような話は報道でもよく見聞きする。そんな中で、俳句は「庶民の詩」たりえるのだろうか。

 そんなことを考えていた時、私の頭に浮かんだ三句を紹介したい。

 非正規は非正規父となる冬も

 「死をよこせ」「あたためますか」おぼろ月

 汗もなくアフマドは四歳だつた

 作者は順に西川火尖(かせん)、土井探花(たんか)、楠本奇蹄(きてい)。三人は三十代、四十代の俳人だ。

 西川の句は、子が生まれると…

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