経済学者の小野塚知二さん
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 日本は武器輸出大国へと変貌(へんぼう)を遂げようとしているのでしょうか。経済学者として武器移転の歴史を研究してきた東大名誉教授の小野塚知二さんは日本の限界を指摘しつつ、「武器を外国に売らない」ことこそ、大切な倫理的価値なのだと語っています。

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 ――日本が武器を輸出できる「普通の国」になるのは、「愚者の選択」だと指摘してきましたね。なぜ愚かだと思うのですか。

 「そもそも日本にとって望ましいのは、国民の消費が伸びて発展するという消費主導型の経済です。ところが、武器輸出は投資主導型で、国が投資し続け、赤字国債が増えて、一部の兵器企業だけがうるおう。健全な経済とは言えません」

 「さらにいえば、抑止力が成り立つのは相手次第です。抑止力とは、相手がこちら側の力を恐れるか否かに依存しており、こちら側で一方的に決めることはできないのです。日本が軍備を増強し、さらに日本製の武器を輸入する国が増えたところで、中国や北朝鮮、ロシアが態度を変えるでしょうか。むしろ硬化して、安全保障環境が悪化するはずです」

 ――武器移転の歴史を研究してきて、そう思うわけですね。

 「歴史的にみると、武器移転は金銭的対価を伴わず、貸与・無償供与という形をとることが多いことに気づきます」

 ――なぜですか。

 「相手国を支配下に置くため…

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