「『百年の孤独』を代わりに読む」「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」

 文学の研究者や専門家ではない書き手による「読書体験」の本が相次いでヒットしている。本を読む人が減っていると言われるなか、なぜ「読書体験」に注目が集まるのか。

本はかっこいいが、文章が読めない

 「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」(大和書房)は、8月に刊行され、8万部に達した。著者はライターのみくのしんさんと、かまどさん。若者向けにゆるくて笑える体験記などを配信するネットメディア「オモコロ」に掲載した記事がもとになっている。

 文章を読むことが苦手なみくのしんさんが、本好きのかまどさんを相手に、太宰治「走れメロス」、有島武郎「一房の葡萄(ぶどう)」といった短編の名作を数時間かけて朗読していく。一文読むごとに、言葉の意味が分からなくて戸惑ったり、物語に感動して泣いたり笑ったり。

 「一房の葡萄」の読後には「俺のことが書かれすぎててビックリ」と驚くが、読んでいる最中は比喩表現の正しい意味が分からず「ごめん!」と謝り、「そこまで気にしなくていい」とかまどさんに言われて安心する。2人で数冊を読み通した結果、本の魅力は新しい表現と出会えることや、100年前に書かれた登場人物と同じ気持ちを共有できることだと感じたという。

 これまで読まなかったのは、文章の読み方が分からない、たくさんある文章のどれが大事なのか分からないから。本が嫌いなわけではなく、友人らが本を読む姿に「かっこいい」と憧れていたという。

 作家で編集者の友田とんさんは、「『百年の孤独』を代わりに読む」(ハヤカワ文庫NF)を6月に刊行した。独立系書店で評判になった自主制作本の文庫化で、ガルシア・マルケスの長編小説「百年の孤独」を4年かけて読んだ体験をまとめたもの。新潮文庫版「百年の孤独」の発売とほぼ同時期で、相乗効果もあり重版した。

 海外文学が好きな友田さんは…

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