イラスト・きたむらさとし

悩みのるつぼ 相談者(20代女性)

 私の生きるうえでのモットーは「期待しない」ことです。他人に対しても自分に対しても、いろんな物事に対しても、期待しないことを常に心がけています。イベントや予定も期待してしまうと、うまく物事が進まなかったときにショックを受けてしまいます。期待していなければ、うまくいったときの喜びは倍増するような気がします。

 人に対しても、この人ならきっとこうしてくれる、こう考えるに違いない、とか、こう言ってくれるはずだと期待すると、そうならなかったとき、その人が悪いわけではないのに、勝手に裏切られたような気分になるのです。期待していないと、想定外のうれしいことを言われたとき、とてもうれしく感じるのです。自分自身に対しても期待して、できなくて打ちひしがれて、自分を心底嫌になった経験がたくさんありました。

 これを親に話すと、「それは良くないんじゃない?」と言われました。自分では分からないのですが、「期待しない」というのは、間違った生き方なのでしょうか? 間違っているのだとしたら、期待することにどんないいことがあるのでしょうか?

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回答者 政治学者・姜尚中さん

 あなたは他人に対しても自分に対しても随分、クールな見方をしているようですね。

 確かに期待値が高いと、裏切られた気分になったり、失望感を味わったりすることになりがちですから、他者や自分に対する期待値を下げるか、そもそも期待しない生き方をした方が気が楽になりそうです。

 世の中なんてそううまくはいかないよというのが、文豪夏目漱石の口癖だったと言われているそうですから、あなたがこの世の中に期待をしない生き方を心がけているとしても不思議ではありません。

 それであなたも周りの人も別に迷惑をこうむっているのでないならば、あなたが悩み相談をする必要もないのではないでしょうか。

 にもかかわらず、「期待しな…

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