パレスチナ自治区ガザで取材を続ける朝日新聞のムハンマド・マンスール通信員は、知人からこんな話を聞いた。
「テントでこの戦争についてずっと書いている女性がいる。記者ではないらしい」
2023年10月に戦争が始まってから2回目の冬を迎えたガザは、地中海からの海風も強く、とても寒い。そんな環境で、女性はなぜ書くのか。マンスール通信員が報告する。
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ある男性は生きたまま、イスラエルの軍用犬に食い殺された。「やめて、やめて」と繰り返し言ったのに、犬をけしかけた兵士も、数匹の犬も、慈悲を見せることはなかった。母親の目の前で、犬たちは男性の胸や腕にかみついた。生まれつきの障害を持ちながらも、必死で戦火を生き延びていた彼が、そんなことをされる理由など一つもなかったのに――。
イスラエル軍の激しい攻撃が続くパレスチナ自治区ガザで、こんな体験をつづった本が、人々の注目を集めている。収録されている物語は12編。戦争下で生きる人々を記録したノンフィクションで、残念ながら、すべてが悲劇だ。
■携帯のあかりを頼りに書き続…