身欠きニシンとじゃがいもの煮物、高野豆腐と野菜の炊き合わせ、カブの浅漬け……。見た目は「映え」とは無縁で、食材が豪勢というわけもない。しかし昔ながらの家庭料理をめあてに、山形県の農村地帯に国内外から客が訪れる農家民宿兼レストランがある。
米作りが盛んな庄内平野にたたずむ「知憩軒(ちけいけん)」(鶴岡市)。NHKの紀行番組「新日本風土記」や雑誌などでたびたび取りあげられてきた。知憩軒の女将自身も、食科学を学ぶイタリアの大学へ招かれ、日本の家庭料理を披露したこともある。
農家に生まれ育った女将(おかみ)の長南光(みつ)さん(75)がつくる料理はどれも昔から家で食べてきたものだ。それがなぜこんなに人をひきつけるのか――。そのわけと料理に込めた思いに迫った。
地域で受け継がれてきた在来作物や伝統野菜は、収量が少なく手間もかかるといった難しさから、継承が危ういものも少なくありません。在来作物をめぐる連載の第2部(全6回)では、在来作物を食の現場から支える人たちを描きます。今回はその2回目。
「自分は旅行できない」それなら
自宅の離れを使って民宿を始…