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専用の刃物を使い、一枚一枚削り出す敦賀のおぼろ昆布=2024年12月9日、福井県敦賀市、佐藤常敬撮影
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 福井県敦賀市の「おぼろ昆布」の製造技術について、国の文化審議会が24日、登録無形民俗文化財に登録するよう答申した。同文化財は2021年に新設され、県内では初の登録となる。

 おぼろ昆布は、酢に浸してやわらかくした昆布を、専用の刃物で薄く削って製造する。敦賀は江戸時代、北前船の中継港として栄え、北海道で採れた昆布も運ばれて昆布加工業が発展。市の調査では、宝暦年間(1751~64)にはおぼろ昆布づくりが始まっていた。製造業者によると、今でも国内生産量の8割ほどを敦賀が占めているという。

 職人が手作業で削り出す昆布は薄いもので0・01ミリ。刃物を用いて様々な厚みに削り分ける技術や、刃先の調整技術が継承されている点などが「地域的特色のある製造技術」と評価された。

 市は22年度から、おぼろ昆布の文化的価値を継承するために龍谷大と共同調査を実施。歴史的背景を調べたり、敦賀の加工職人に聞き取ったりした成果を昨年、報告書にまとめ、登録を後押ししたという。米沢光治市長は「より多くの人におぼろ昆布のおいしさや職人の技術のすばらしさを知ってほしい。市も技術の伝承に取り組み続けていきたい」とコメントした。

 国の「現代の名工」に20年度に選ばれた昆布職人の別所昭男さん(81)は「先人や地域が大切に守ってきた食文化に、日が当たったようでうれしいです。昆布職人に興味を持つ若い世代が増えてくれたら」と喜びを語った。

 敦賀市は3月8日午後2時から市立図書館で、文化庁の食文化担当の調査官を招いたミニシンポジウム「再発見!敦賀のおぼろ昆布」を開く(予約不要)。

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