海洋研究開発機構(JAMSTEC)船舶工務部長 川間格さん(53)

 水深200メートルより深く、太陽の光が届かず真っ暗な世界、深海。有人潜水調査船(潜水船)の「しんかい6500」と前身の「しんかい2000」のパイロットを長年務め、もぐった回数は173回にのぼる。

 潜水船には通常、2人のパイロットと研究者の計3人が乗る。深海に住む生き物や、地熱やマグマで熱せられた海水が噴き出す「熱水噴出孔」、地震で海底に生じた断層の調査など目的は様々だ。

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JAMSTEC船舶工務部長の川間格さん。研究者が持参した大きな観測装置を、観測に支障のない範囲で覆いを切って調整するなど、操縦以外の仕事も重要だという=神奈川県横須賀市、高木忠智撮影

 1回の潜航は8時間ほど。水深6500メートルに潜るには片道で2時間半ほどかかり、調査の時間は3時間ほど。効率的な調査は、パイロットの腕にかかっている。

 潜水船には浮力材が大量に使われ、海面に浮くように作られている。積んだ鉄板(バラスト)の重さで潜り、帰りは鉄板を切り離すことで浮上する。海底をこするように進んだり、上下方向のプロペラで浮き上がりながら進んだりすれば、砂が巻き上がって前が見えなくなってしまう。海底の広い範囲を調査する場合は、船体を少し軽くしておき、プロペラを使って船を下に抑えつけながら進むのがコツだ。逆に、1点を集中して調査する場合は、安定して着底できるように重りを調整する。

 時には研究者が、搭載できないほど大きな観測装置を持ってくることもある。その時は、観測の支障にならない範囲で覆いを切ったり、部品を付け直してもらったりしてコンパクトにすることも、パイロットの大事な仕事になる。

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深海潜水調査船支援母船「よこすか」に搭載された有人潜水調査船「しんかい6500」。正面の円窓は、主にパイロットが使う。前面に2本のアーム(マニピュレーター)がついている=神奈川県横須賀市、高木忠智撮影

 パイロットとして、できるだけ研究者の要望を聞き、「むちゃぶり」と思ってしまうような要望であってもかなえることを心がけてきた。

 悪天候で潜航が中止になった…

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