ウクライナ西部に開設した避難所を今年6月に訪ねた小野元裕さん(左端)=本人提供

 先の見えない戦争が続く中、ウクライナの子どもたちが何を願っているのかを伝えたい――。戦時下の人々の支援活動に取り組む日本ウクライナ文化交流協会会長の小野元裕さん(54)=大阪府八尾市=が、ロシアによる全面侵攻から1千日目となる今月19日にあわせて、現地の子どもたちの作文をまとめたブックレットを出す。本づくりを思い立ったきっかけは、戦争の犠牲者は非力な市民だと長年、市井の人々の戦争体験集づくりを続けた「師匠」の急逝だった。

 〈なぜかママと妹が服を着て廊下で寝ていたわ。いつものようにパパは家にいなかった。〉

 ウクライナ東部クリビーリフ市に住む5歳のポリーナさんから寄せられた「私の夢はパパが戦争から帰ってくること」の一節だ。戦地で戦う父親は不在のまま。6歳になる今年中に父親が無事帰還することが「私の夢」と結んだ。

 作文はウクライナ各地の5歳から14歳まで14人の子どもから寄せられた。避難民や戦争孤児らのための避難所作りに連携して取り組む現地のNGO代表理事のアンドリー・ブチネフさんが協力した。

 首都キーウに住む7歳のスヴェトスラフ君は「戦争は僕たちの一部になってしまった」との題で作文を寄せた。出征した父親が負傷し、見舞いに行った。父親はほほ笑んでくれたが、戦争前とは表情が違った。腕や足を失った負傷兵が横たわっているのも目にした。連日のように鳴り響く空襲のサイレン。父親は再び戦地に向かって家にいない。

 〈僕が望むのは、パパがずっ…

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