【山口】県内の中学生と高校生による「平和の島スピーチコンテスト」(周南観光コンベンション協会主催)で、下松市立久保中3年の武智春香さんと周南市の桜ケ丘高2年の大原菜々さんが、最優秀賞に輝いた。2人は戦争の悲惨さを訴えた。

 周南市大津島には、太平洋戦争末期に出撃した人間魚雷「回天」の訓練基地跡がある。スピーチコンテストは10日の「回天」追悼式に合わせて、2日に開催され、今年で8回目。155人の応募があり、1次審査を通過した中高生14人が発表した。

 中学生の武智さんは、祖父母が大切に保管しているアルミ製の水筒について語った。曽祖父が戦地で喉(のど)を潤した水筒だという。「黒く焦げたような色が浮き上がり、あちこちぶつけたような跡もある」

 敗戦後、曽祖父はシベリアに抑留され、過酷な労働を強いられた。その生きた証しを涙ながらに聞かせてくれる祖父母に触れ、「中学生にできることは少ないけれど、戦争体験者から話を聞き、後世に伝えることが平和な世界をつくる小さな一歩だと思う」と結んだ。

 高校生の大原さんは、終戦記念日に開催された式典で、「回天」に乗り込む若い兵士たちが家族にあてた手紙を読んだ。その衝撃を振り返った。

 どの手紙も、死への不安や親元を離れる寂しさには触れず、気丈な態度を示す内容だった。「(搭乗兵たちの)平和な世界を生きたいという本望が叶(かな)わないことは、とても残酷」と主張した。

 今も攻撃の応酬が続く中東やウクライナの現状に触れ、「戦争は不幸しか生まないことを国単位で認識し、広めていくこと」の重要性を訴えた。(三沢敦)

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