春祭「ちょんこ山祭」で、曳山の前に立つ南代喜郎さん(左)と青山正道さん=2024年4月20日午前11時16分、石川県能登町、金居達朗撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 能登半島各地で行われるキリコ祭りの始まりを告げる石川県能登町宇出津(うしつ)の「あばれ祭」。能登半島地震で地区は大きな被害を受けたが、今年も通常開催を目指して準備が進められている。

 あばれ祭は、同地区の八坂神社に、酒垂神社と白山神社が奉仕する祭礼で、毎年7月第1金・土曜日に行われる。2基の神輿(みこし)を川や火に投げ込み、あばれる勇壮さで知られているという。酒垂神社と白山神社は、4月20日に毎年行っている「曳山(ひきやま)祭」に代わり、「ちょんこ山祭」を開催して、地域を盛り上げた。

  • 写真ルポ 能登半島地震

 祭りを支える酒垂神社実行委の青山正道さん(39)と南代喜郎さん(38)は幼なじみで、これまでも祭りに関わってきた。「ちょんこ山祭」でもそれぞれ木遣(きや)りを歌い、焼きそばの露店を出した。

 「あばれ祭」や「ちょんこ山祭」の開催を望まない声も少なからず聞こえてきた。二人は、「能登町に限らず、珠洲市や輪島市など周囲の被災状況を見れば、馬鹿だと言われるかもしれない」と話す。

 青山さん、南代さんともに、家族や自宅は無事だったが、停電や断水などで不便な生活を強いられてきた。「地震発生から我慢し続けてきた子どもたちやお年寄りに楽しんでもらいたい」と葛藤しながらも開催に賛成したという。

 「ちょんこ山祭」では、小さい曳山を引く子どもたちや見守るお年寄りたちの生き生きとした表情が見られた。久しぶりに地区に活気が戻り、南代さんは「開催してよかった」と改めて感じたという。

 青山さんは、「いつも通りの日常を取り戻したい」と力を込める。「そのためには、見た目だけ戻すのではなくて、心も元に戻さなきゃ」

 地区内では、道路が損壊していたり、家が倒壊して自宅に戻れない住民がいたり、「あばれ祭」の開催に向けて問題は山積みだ。それでも、二人はこれからも祭りを盛り上げ続けるつもりだ。(金居達朗)

共有