パレスチナ自治区ガザで戦闘が始まった――。その一報を、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ガザ事務所職員の吉田美紀さん(41)は、広島から東京へ向かう新幹線の中で見たニュースで知った。広島の高校生との交流のために来日したガザの中学生3人が隣にいた。

 UNRWA職員として、2016年からガザに駐在。家族のようだった一家の部屋を間借りし、人道支援を続けてきた。昨年10月から続くイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘のため、ガザに戻れなくなり、ヨルダンで食料配布や教育などの支援に奔走する。

 青森県で生まれ、祖父からシベリア抑留の体験談を聞かされて育った。幼いころは「戦争は遠い国のこと」と実感がわかなかったが、小学生の時、湾岸戦争で米軍中心の多国籍軍がイラクをミサイルで空爆する様子をテレビ中継で見て、急に現実とつながった。

 難民や国際協力に興味を抱き、米国の大学などで国際政治や平和学を学び、日本のNGOへ。15年、ガザの中学生を招待し、東日本大震災の被災地、岩手県の子どもたちとたこ揚げで交流したことが転機となった。

「鳥になったみたい」ガザの中学生の一言に揺さぶられ

 野球場を走り回り「鳥になっ…

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